大判例

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長野家庭裁判所諏訪支部 事件番号不詳 判決

本籍 長野県諏訪市大字上諏訪千九十四番地

住所 同県同市同大字二千九百七十二番地

芸妓下宿業 すみ江こと外川スミヱ 明治四十五年二月二十五日生

主文

一、被告人を懲役三月に処する。

二、この裁判確定の日から一年六月の間右刑の執行を猶予する。

三、訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

一、罪となるべき事実

被告人は、長野県諏訪市大字上諏訪二千九百七十二番地の自宅において、芸妓下宿業を営んでいる者であるが、自分の家に置いていた芸妓F子ことB子(昭和十四年三月三十一日生)が十八才に満たない児童であるのに、公信性のある書面の参照その他通常可能な調査方法によつて右児童の年齢を確認する方法を採らず、ただ漫然と紹介者の言により同女が十八才以上の者であると軽信し、同女をして、

(一)  昭和三十年八月三十日頃長野県諏訪市○○町○丁目○千百○十○番地旅館○○において

(二)  同年九月四日頃同市○○町○丁目○千十○番地の一料理店○○○において、

(三)  同年十月三日頃同市同町○丁目○千○百○十○番地旅館○○において、

いずれも氏名不詳の遊客に売淫させ、もつて児童に淫行させたものである。

二、証拠の標目

一、証人B子の尋問調書

一、B子の戸籍抄本

一、司法警察員の面前における武川えみ子、伊藤峰子、田中みゑ子の供述を録取した各調書

一、検察官の面前における被告人の供述を録取した調書

一、司法警察員の面前における被告人の供述を録取した調書二通

一、押収してある玉代帳一冊(昭和三十一年証第十二号の一)の存在

三、法令の適用

判示被告人の所為は、児童福祉法第三十四条第一項第六十条第一項に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で量刑し、被告人を懲役三月に処する。しかしながら諸般の情状に照すと刑の執行を猶予するのを相当と認めるので、刑法第二十五条第一項によりこの裁判確定の日から一年六月の間右刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法第百八十一条第一項本文の規定によつて全部被告人に負担させることとする。

なお、本件公訴事実中、被告人は、判示犯行に先きだち昭和三十年八月二十七日頃判示B子をして諏訪市○○町所在の割烹旅館○○○及び割烹○○○○において、それぞれ氏名不詳の者に売淫させ、もつて児童に淫行させた。という事実についてはこれを認めるに足る的確な証拠がない。即ち被告人が右Bに売淫を勧めたことを推測させる証拠となるべき証人B子の証言及び同人の検察官面前調書中「八月二十三日頃被告人から○○屋旅館にお泊りに行くようにいわれた」との供述は、証人宮下チヨルの証言に照して信用できないし、他に右八月二十七日以前において被告人が右Bに売淫をさせたことを肯認するに足る有力な証拠はない。却つて、被告人が最も自己に不利益な供述をしているとみられる司法警察員面前調書(第二回)によると、被告人は「昭和三十年八月二十七日に見番を通してF子の名指しでお座敷がかかつたので右Bを○○○にやつたけれども、其処でのお泊りのこと並びに○○○○のお泊りのことは全く知らない」旨の供述がある。であるからこの時期までには被告人は右Bが売淫をしていることを知らなかつたものとみるべきである。しかし同じ調書によると、被告人は「翌日の勘定日には○○○と○○○○の勘定をF子が十本づつ貰つて来たのでF子が一晩に二人のお客とお泊りをしたことを知つた」旨の供述がある。これによつてみると、被告人は、同月二十八日に至つてはじめて右Bが売淫をしていることを知つたものというべきである。そしてその後被告人は、右Bの売淫を知りながら同人に対し「よく稼げ」とか「よく働け」とか申向け、売淫行為を暗黙のうちに容認して働かしていたものと考えられる。右の如くであるから、昭和三十年八月二十八日以前における右Bの売淫行為は被告人のあづかり知らないところであつたというべく、公訴事実中の右同月二十七日の事実はいずれも犯罪の証明がないことに帰するけれども、この点は判示事実と包括一罪の関係にあるものとして起訴されたものであるから、特に主文において無罪の言渡はしない。

四、結論

以上説明したとおりであるから主文のとおり判決する。

(裁判官 田中加藤男)

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